2017年5月6日土曜日

羽毛布団は知っていた(その1)【変態老人の悪夢】




俺は今、布団を被っている。

おかしい。これはきっと夢だ。俺はこのところ、毎夜のように夢を見るのだ。

布団を被っているだけなら、別に不思議ではない。そりゃ、寒けりゃ、布団だって被る。妻に見つかってはマズイことを家でしようとしたら、その時だって、布団は被る。

しかし、俺は今、布団をかぶって外出しているのだ。高級羽毛布団だから、重くはない。

とはいえ、布団は布団だ、軽いとはいえない。身に纏うものではない。

俺はパジャマを着るように、布団を身に纏い、外出しているのだ。

常人は、パジャマを着て外出はしないが(某国の人たちは除く)、俺はパジャマを着て外出しても、それがパジャマとは気付かれない特技を持っている。

布団を「着て」外出し、そのことに誰にも気付かれなかったら、それは痛快かもしれないが、布団は少々嵩張る。

パジャマでは電車にも乗っているが、布団ではそれは難しいだろう。満員なら乗れないし、満員でなくとも、周りの乗客に睨まれるであろう。

その前に、改札を通ることができるかどうかも怪しい。

それにしても、俺は何故、布団をかぶって外出しているのだ?





やはりこれは夢なのだ。

最近も、俺は、トラック野郎になった夢を見たり、コンコルドを操縦した記憶はないのに操縦したことになっているという妙な夢も見た。

俺が、頭に手拭いを巻き、デコトラを運転するなんて似合わないし、コンコルドは操縦したことがないというか、既にコンコルドは退役し、飛行していないのだ。

妙な夢を見たものだ。

布団をかぶって外出するというのも、十分妙だ。

だから、これは、夢なのだ。トラック野郎になった夢や、コンコルドの夢と比べると、「快感」を伴っていないところが気に喰わないが

布団はただ重く(羽毛布団は軽いが、パジャマよりは重い)、そして、暑かった。だって、もう5月だ。パジャマだって、もう冬物は着ていない。

夢なら、いや、夢だから早く醒めて欲しい。「快感」になる要素もないのだし……..

と思ったら、俺の心を見透かしたかのように、「快感」を誘う香りが漂ってきた。

女性の香りだ。

布団を被っているので、見えないが、側に、イブ・サンローランの「オピウム」を付けた女性がいる。




ま、ま、まさか、アイツか!?


(続く)









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