俺は今、布団をかぶって外出している。高級羽毛布団だ。
これは夢だと思う。
最近見たトラック野郎になった夢や、コンコルドを操縦した記憶はないのに操縦したことになっているという妙な夢同様、これも夢なのだ。
夢だから早く醒めて欲しい。最近の夢と異なり「快感」になる要素もないのだし、と思ったら、俺の心を見透かしたかのように、「快感」を誘う香り、女性の香りが漂ってきた。
布団を被っているので、見えないが、側に、イブ・サンローランの「オピウム」を付けた女性がいる。
ま、ま、まさか、アイツか!?
(参照:羽毛布団は知っていた(その1)【変態老人の悪夢】の続きである)
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ま、ま、まさか、アイツか!?そうだ、この香りは、トシコだ!
マズイ。
トシコは、元同僚で、元カノだ。
俺はトシコを棄て、やはり元同僚で、美人のトシコよりももっと美人で会社のマドンナであった妻を選んだ。
トシコも、相手がマドンナでは勝ち目はないと早々に観念し、別れるにあたり、揉めることはなかったが、棄てたことに変りはなく、トシコに会うのは気まずいのだ。
マズイ、とは思うものの、俺の体のある部分には、その思いとは別に異変が生じていた。
かつて巨乳のトシコの胸に顔を埋めていた時に起きていたのと同じ現象だ。
これは更にマズイ。会うだけでも気まずいのに、異変が生じているのだ。トシコは、俺の異変に敏感であった。
自分を棄てたくせに、自分に会って『反応』している、なんて思われる。尚更、気まずいではないか。どういう顔をすればいいのだ。
「ビエール、久しぶりね」
なんて声をかけられたら、どうしよう…….
「あら、トンミーさんのご主人、お出掛けですか?」
ああ、トシコに声をかけられた。しかし、『彼女』は、『トンミーさんのご主人』と云った。
トシコはいつも、俺のことを『ビエール』とか、『ビー』もしくは『ビーちゃん』と呼んでいたのだ。
皮肉か?自分を棄てて、マドンナと結婚したので『ご主人』なんて声をかけてきたのか?
その時、側まで来た『彼女』の脚が、頭からかぶった羽毛布団の隙間から、スーッと見えた。
「?」
ホットパンツだ。美脚だ。トシコも美脚であったが、ホットパンツは穿かない。
『彼女』は、トシコではない。俺と別れた後、ホットパンツを穿くようになったかもしれないが、『彼女』は、トシコではない。
俺は、そのホットパンツを穿いた脚に見覚えがあったのだ。
俺の体の異変はより激しくなり、被った羽毛布団の中は、俺の興奮で熱が篭り、ある異臭がし始めた。
(続く)
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