2017年5月27日土曜日

【目薬で逮捕?】快感の点眼(後編)




一見、大学教授風の老人紳士が眼科に通っているのは、ドライアイだからであり、その原因はパソコンで長時間エロ画像を瞬きもせず注視しているからだ。

『トシ江先生』は、そのことを知らない。老人の理知的な姿から、きっと学術書を読み過ぎた為に目が乾いたとでも思っていることだろう。

しかし、太ももムッチリの看護師は老人の本性を見抜いているようだ。

「この助平爺。そのあご髭からしてイヤラシイ」

看護師の視線は、そう云っていた。





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「この助平爺。そのあご髭からしてイヤラシイ」

視線でそう云いながら、太ももムッチリの看護師は、この日も俺を仰向かせ、胸を俺に押し付けて来た。

俺も、この日も、『興奮』した。

「助平爺め。なんだその膨らみは!いい歳をして」

押し付けた胸を通して敵意を伝えながら、看護師は顔を俺の顔に重ねて来た。

そして、左手薬指と親指で俺の右眼を上下に開かせる。

右手は、目薬をかざす。

1滴、目薬が右眼に落ちる。目薬は、重力以上の力が働いたかのように、強く俺の右眼に刺さる。

キーン!

エロ画像に疲れた眼に点滴されると、『キーン』と眼球全体に染み渡るのだ。この快感は何事にも代え難い。

きっと覚醒剤の常用者が感じる快感と同じであろう。そうである。目薬は俺にとっては『シャ○』である。俺は、立派な『シャ○』中毒である。

「うっ!.....」

看護師の胸がさらに強く押し付けられた。

「分ってるぞ。お前は、快感なのだろう。そう、アタシの胸で、ほーら、また膨らんだ。助平爺め」

いや、看護師は分っていない。

ああ、俺は助平だし、お前の胸に『興奮』しているのは事実だ。しかし、お前は分っていない。

看護師は、再び、左手薬指と親指を使い、今度は、俺の左眼を上下に開かせる。

右手に持つ目薬、また1滴、今度は左眼に落とす。目薬は、そう、彼女の意思の力で、強く俺の左眼に刺さる。

「どうだ、痛いだろう!お前だって痛みを知ればいいのだ!...アタシだって痛み、苦しんだのだ、あの時」

押し付ける胸で、俺の胸に敵意を伝える。

いや、お前は分っていない。『トシ江先生』だって、分っていないであろう。

医療用の目薬は、効く。凄く効く。

痛い程、効く。しかし、『痛い程』、ではあって、『痛い』ではないのだ。

『痛い』と云えば『痛い』が、痛くないのだ。快感なのだ。

看護師が敵意を込めて刺す目薬は、快感なのだ。

看護師が俺に何の恨みがあるのかは知らないが、効く目薬でその恨みを晴らすつもりなのかも知れないが、むしろ、それは俺の快感になるのだ。

キーン!

エロ画像に疲れた眼に、目薬は、『キーン』と染み渡る。ああ、この快感は何事にも代え難い。

目薬には中毒性がある。一旦、目薬の世界に魅入られるともうそこからは離れなくなる。目薬の快感を得るためにはどんな犯罪にでも手を出すだろう。どんな慈善事業にも手を染めるであろう。

目薬のさし過ぎで、体も蝕まれていくことだろう。『目薬を辞めますか、人間辞めますか』の標語が交番に貼られる日も近い。

友よ、エヴァンジェリスト氏よ、いつか俺は、逮捕されるかも知れない。その時は、小菅まで面会に来てくれ。君は、小菅での面会方法は知っているであろう。経験があるからな。




……….かくして、俺は、美人眼科医とエロ看護師の眼科に行って目薬を処方してもらうのである。



俺は、深夜のエロ画像に『興奮』する。

『トシ江先生』の美貌に『興奮』する。

看護師の太ももと胸に『興奮』する。

看護師の敵意の視線にすら『興奮』する。

そして、何よりも、目薬に『快感』する。犯罪的に『快感』するのだ。



(おしまい)






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