2017年5月9日火曜日

羽毛布団は知っていた(その4)【変態老人の悪夢】




俺は今、布団をかぶって外出している。高級羽毛布団だ。

これは夢だと思う。

夢だから早く醒めて欲しい、と思ったが、元カノの『俊子』を彷彿させるホットパンツから美脚を見せた茂子さんに会い、

「茂子さんさえいいのなら、ご主人でなく、私に抱きついて頂いても….」

とよからぬ想いを抱く等しながら、俺はある場所に着いた。

そこに置かれた物と、その物に付いた残り香に、俺の体は再び、異変が生じ、被った羽毛布団の中は、俺の興奮でまたまた熱が篭り、ある異臭に充満されてきた。

そこは何処か?そこに残された物は何であったのか?


(参照:羽毛布団は知っていた(その3)【変態老人の悪夢】


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そこは、ゴミ集積場であった。

そこには、ゴミ袋が一つだけ置かれていた。ティシュで満たされた袋である。ティシュしか入っていないように見えた。

何故だ?こんなに大量のティシュを、何故だ?

花粉症なのか?鼻炎がひどくて、ひたすら鼻をかんだ結果なのか?

しかし、残り香から、俺はそのゴミの持ち主を知った

イブ・サンローランの「オピウム」だ。『俊子』もこのフレグランスを使っていたが、『俊子』はここに住んではいない。

『俊子』に似た美脚の持ち主だ。茂子さんであることを確信したのだ。先程、会った茂子さんだ。ティッシュのゴミを棄てにきた帰りだったのだ。

茂子さんは、美脚だけではなく、使っているフレグランスも『俊子』と共通していた。

そうして、俺の頭の中は、妄想の嵐となった。

様々な甘美の『像』が頭の中を、右から左に、左から右に、上から左下に、右下から左60度上に、と飛んで行った。

俺の体にまた異変が生じていた。異臭も放ち始めた。

「茂子さんだ。茂子さんがこんな大量のティシュを!」




そう思うと、甘美な『像』は嫉妬に切り裂かれ始めた。俺の興奮は怒りに変った。

忘我の俺は、それまで被っていた羽毛布団を頭上に掲げ、怒りをぶつけるように、ティシュで埋ったゴミ袋に叩きつけた。

両肩を幾度も上げ下げし、大きく忙しなく息を吸った。

ティッシュのゴミ袋は、羽毛布団に覆われ、「オピウム」の香りは消えた。羽毛布団の放つ異臭に芳しい香りは掻き消されたのだ。

「オピウム」の香りが消え、冷静さを取り戻した俺は、ウチに向った。

ウチに戻りながら、俺は理解した。

何故、羽毛布団を被って外出したのか?

そうだ!不要となった羽毛布団をゴミ出ししに行ったのだ。

夢ではなかったのだ。夢である必要はなかったのだ。

頭から被って運ぶところに、若干の違和感を覚えなくはなかったが、俺は俺の行為に納得した。

布団を被っている姿は、異様ではあったと思うが、トラック野郎になったり、コンコルドを操縦することに比べると(夢の中のこととはいえ、未だに操縦した実感はないが)、突拍子もないレベルのものではなかった。

夢ではなかった。

しかし、ウチに着き、玄関のドアを開けた時、再び、それが現実なのか、夢の中にいるのか、分らなくなった。

玄関のドアを開けた時、そこには..........


(続く)




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