友であるビエール・トンミー氏が、『俺は、タツ!』と云ったことを聞き、一旦は、嫉妬にかられたものの、
「仮に●●●子先生が『どうか、お相手を』と云ってきたところで、アイツは半勃ちで役には立たないさ。ハハハハハ!」
等と云って勝ち誇ったように笑い、エヴァンジェリスト氏は、ようやく落ち着きをみせた。
そこで、特派員はようやく口を挟むことができたのであった。
「仰ることは、殆どその通りだと思いますが、一点だけ違っているのです」
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「仰ることは、殆どその通りだと思いますが、一点だけ違っているのです」
そうして、特派員は諭すようにこう云った。
「ビエール・トンミー氏は、『選挙に立つ』、と云ったのです。選挙に立候補です」
「はあ~ん?立候補?アイツ、何を考えているんだ?」
エヴァンジェリスト氏の口の端からは、泡も呆れて、一つ、シャボン玉のようになって飛んで行った。
「何に立候補するというのだ?都議選か?それとも年内にはあるかもしれん衆議院選挙か?ああ、マンションの管理組合の理事長だな。俺が理事長になったことを羨ましがっていたからな。ハハハハハ」
「いえ、お言葉ですが、マンションの管理組合の理事長ではありません。あの方は、貴方とは違い、ちゃんとした一戸建住宅にお住いですから」
「ぶ、ぶ、無礼者おー!」
「いや、これは失敬。つい口が滑りました」
「なにい!口が滑っただとお!」
「いやいや、ま、それはいいとして」
「よくない!」
「ビエール・トンミー氏が何に立候補するかは不明ですが、政治の世界のことであることは確かです」
「本当か?毎週通っているオープンカレッジの西洋美術史講座の級長ではないのか?級長になって、●●●子先生とお近づきになろうという魂胆であろう。アイツの考えそうなことだ」
「おお、確かにそれはあの方らしい。『女教師と男子生徒とのイケナイ関係』って、その筋の映画かビデオのタイトルになりそうです」
「アイツは『プロの変態』だからな」
「貴方の仰ることには説得力があります。しかし、ビエール・トンミー氏が立候補するには、ちゃんとした理由があるのです」
「『ちゃんとした』という言葉程、アイツにに似合わない言葉はないと思うがなあ」
「立候補するのは、『目薬禁止法』設立を阻止する為なのです」
「はあ?なんじゃ、それは。『目薬禁止法』なんて聞いたことがないぞ」
「私も聞いたことがありません。しかし、どうやら一部に『目薬禁止法』を作ろうという動きがあるようなのです。利権絡みなのです」
「政権中枢にいる奴が、留学時代の遊び友だちに融通をきかせてやる、といった構図か?」
「今のところ何の証拠もありませんが、貴方の説を否定する材料もありません。その中枢にいる奴は、留学時代、遊び呆けていたので、語学習得なんて全くダメだったようですが、女性をナンパする言葉だけは覚えたという噂もなくはありません。その時のナンパ仲間が絡んでいるようなのです」
「しかし、目薬を禁止することが、どうして利権に繋がるのだ?目薬は危険ドラックではないであろうに」
「危険ドラックかどうかは知りませんが、目薬をさすことで、えもいわれぬ快感が得られるらしいのです」
「ワシなんぞは、目薬は苦痛でしかないがな。ワシは、体内に異物を入れられるのがとにかく嫌だ。だから、浣腸もゴメンだし、座薬は、それと聞いただけで、尻の穴を手で塞ぎ逃げ出すくらいだ」
「世の中には、それが快感だ、という人もいるのです。私もその気持ちが全く分からない、というものでもなくはありません。貴方だって、『イヤ、イヤ』が段々、快感に変わるかもしれませんよ」
「やめてくれ!アッチの趣味はない」
「無理強いはしませんが.....」
「そんなことより、何故、目薬が危険ドラックになるのだ?」
「詳しくは、当人でないと判りませんが、目薬をさされて『キーン!』となるのが、ビエール・トンミー氏にとっては、何ものにも代え難い快感のようです。『犯罪的な快感』とも云ってました」
「目薬で快感とは、やはり『プロの変態』だな」
「多分、トンミー氏の他にも、目薬で快感を得ている人たちがいるのでしょう。『人間やめますか?目薬やめますか?』と問われたら、人間をやめる者たちがいるのでしょう」
「しかし、目薬を禁止することで、どうやって利権を得るのだ?」
「闇ですよ。闇で目薬を製造し、闇で売るのです」
「当然、価格は暴騰するってことかあ。確かに利権だな」
「だから、ビエール・トンミー氏は、『目薬禁止法』設立を阻止したいのだと思います。その為に、『立つ』のでしょう」
「タツ為にタツ、ってことか」
「?」
「『勃つ』為に『立つ』のであろうが、可哀想に…」
「あれ?もうお怒りではないのですね」
「怒り?ワシがいつ怒ったのだ?せいぜい頑張るように云っておいてくれ」
「応援するのですか?」
「ああ、いいだろう。友だちだからな。アイツには俺くらいしか友だちはいないからな」
「貴方だって、ビエール・トンミー氏くらいしか友だちはいないのでしょうに」
特派員の柔なか批判もものかわ、エヴァンジェリスト氏は悠然と云い放った。
「ビエールよ、変態らしく、羽毛布団でも被って選挙活動でもすればいい。ワシが選挙ポスターを作ってやろうぞ。ハハハハハ!!!」
(おしまい)
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