2017年12月3日日曜日

「Windowsですか?」(その11)[流涎のビエール・トンミー氏]



JANAのスチュワーデス(CA)が、勤務中の機内で仕事を忘れ、甘えた声で話し掛けている男は、『プロの旅人』であった。

ビエール・トンミー氏は、口の中で叫んだ。

「エヴァ!」

そう、ビエール・トンミー氏がよく知る男は、そう、彼の友人であるエヴァンジェリスト氏であった。

「iBookって、使い易いんですよね。使っている人に訊くと皆、そう云うんですう

『ですう』と、スチュワーデス(CA)に話し掛けられたエヴァンジェリスト氏は、

「ええ、使い易いですよ。全然違います。機会があれば、切替えて下さい」

と答えるに留めていた。

ビエール・トンミー氏は、自分なら、『機会があれば私がセットアップもお手伝いしますし、その後も分らないことがあればサポートしますよ』、と云うぞ、と思った。

しかし、エヴァンジェリスト氏は、『機会があれば、切替えて下さい』という以上の言葉を発しなかったからであるのか、スチュワーデス(CA)は、

「ええ…………」

と云ったまま、エヴァンジェリスト氏の席の横にまだ立ったままでいた。

そうか!焦らし作戦なんだな!







焦らして、焦らして、スチュワーデス(CA)の想いを更に募らせる作戦なんだ!汚い奴め!

ビエール・トンミー氏の顔の紅潮は、頂点に達しようとしていた。

「やっぱりいいですよねえ。いいなあ」

未練がましくそう云うと、スチュワーデス(CA)は、ようやくエヴァンジェリスト氏の側を離れた。

前方に向いながら、スチュワーデス(CA)は振り返り、iBookを見て(いや、エヴァンジェリスト氏を見て、であったであろう)、

「ふふ」

と、声は出さず微笑んだ。

その様子を見るビエール・トンミー氏は、髪に覆われた頭皮まで紅潮していた。

「エヴァの奴う…..!」

と、呻くと、怒りに喉が渇いたビエール・トンミー氏は、飲み物サービスでもらったりんごジュースを一気に飲み干した。



そして、空になった紙コップをPCのキーボードの上に置いた。

その時であった。

「お客様、飲み物のお代りは如何ですか?」

斜め後ろから、ビジネス・ライクな声がした。

ビエール・トンミー氏が、振り向こうとした時、その声は、

「あら……..」

と声音を変えたのであった



(続く)



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