「エヴァさん、曲がれるよね?」
列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、「ハリルのやるサッカーに全てを服従して選ばれていく、そのことのほうが僕は恥ずかしいと思っている」と発言する本田圭佑も『曲がったことが嫌いな男』だと思うようになることを、まだ知らなかった。
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1982年の冬、エヴァンジェリスト氏は、会社の同期でスキーに行くこととなった。
エヴァンジェリスト氏は、同期の1人であるオン・ゾーシ氏の依頼で、オン・ゾーシ氏がニキ・ウエ子さんと行くクルマ(セダン)に同乗してスキー場に向った。
スキー場には、夜行バスで行くことになったが、オン・ゾーシ氏は、付き合っているニキ・ウエ子さんとクルマで行きたかった。付き合っていることは、秘密にしていたので、カモフラージュにエヴァンジェリスト氏を使うことにしたのである。
「はい、アーン」
セダンを運転していたオン・ゾーシ氏が、助手席のニキ・ウエ子さんの方を向き、口を開け、ニキ・ウエ子さんは、オン・ゾーシ氏の口に何かをポンと投げ入れた。
「ふふ…っ」
甘い香りが、車内に漂った(ような気がした)。
「エヴァさんもどう?キャンディ」
「は…っ….」
不意をつかれたエヴァンジェリスト氏は、両手で股間を抑えた。
「はい、アーン」
と、ニキ・ウエ子さんが、恋人のオン・ゾーシ氏の口にキャンディを入れてやるのを見て、エヴァンジェリスト氏は、妄想の世界に入っていたのだ。
「(….口移しの方がいい…..ボクは)」
と、ピンクの口紅をつけたニキ・ウエ子さんの唇に目が行っていた。
ニキ・ウエ子さんに関心がある訳ではなかったが、
「(ああ、唇を舐めたい…….いや、オン・ゾーシは、もう……)」
と、股間に『異変』が生じ始めていた。
「(いやいや、オン・ゾーシは、ソレ以上のことをもう、ニキ・ウエ子さんと…..)」
と、何故か、その時、下宿の近くの青の薬局で目にしたオシャレな小箱を思い出していた。
そして、その用途を想像し、エヴァンジェリスト氏の体のある部分が、『自分は曲がったことが嫌いです』と云わんばかりに硬直したのだ。
(続く)
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