「エヴァさん、曲がれるよね?」
列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、20年、30年後の日本では、「ハリルのやるサッカーに全てを服従して選ばれていく、そのことのほうが僕は恥ずかしいと思っている」と発言する本田圭佑とは異なり、「会社に(上司に)服従していく」会社員が多くなることを、まだ知らなかった。
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エヴァンジェリスト氏は、1982年の冬、同期の1人であるオン・ゾーシ氏の依頼で、オン・ゾーシ氏がニキ・ウエ子さんと行くクルマ(セダン)に同乗してスキー場に向った。
オン・ゾーシ氏は、ニキ・ウエ子さんと付き合っていたが、そのことを秘密にしていたので、カモフラージュにエヴァンジェリスト氏を使うことにしたのである。
「はい、アーン」
と、ニキ・ウエ子さんが、恋人のオン・ゾーシ氏の口にキャンディを入れてやるのを見て、エヴァンジェリスト氏は、妄想の世界に入った。
「(….口移しの方がいい…..ボクは)」
ニキ・ウエ子さんに関心がある訳ではなかったが、
「(ああ、唇を舐めたい…….いや、オン・ゾーシは、もう……)」
と、股間に『異変』が生じ始めていた。
「(いやいや、オン・ゾーシは、ソレ以上のことをもう、ニキ・ウエ子さんと…..)」
と、何故か、その時、下宿の近くの青の薬局で目にしたオシャレな小箱を思い出し、そして、その用途を想像し、エヴァンジェリスト氏の体のある部分が、『自分は曲がったことが嫌いです』と云わんばかりに硬直したのだ。
その時であったのだ。
「エヴァさんもどう?キャンディ」
と、ニキ・ウエ子さんに声を掛けられ、
「は…っ….」
不意をつかれたエヴァンジェリスト氏は、両手で股間を抑えたのであった。
「いや、ボクはいいです」
エヴァンジェリスト氏は、丁寧語で返した。ニキ・ウエ子さんは、同期ではなく、2期上の先輩であった。
尤も、2期上だが、短大卒なので、年齢は、エヴァンジェリスト氏の同期達とほぼ同じであったのだ。
修士課程に行く等、回り道した入社したエヴァンジェリスト氏は、ニキ・ウエ子さんより4歳年上であったが、オン・ゾーシ氏とニキ・ウエ子さんとは、同い年であった。
期は違っても同世代で普段から親しく、ニキ・ウエ子さんは、エヴァンジェリスト氏達とスキーに行くことになったのだ。
いや、オン・ゾーシ氏とは、スキーに行く前に、『親しい以上の関係』になっていたのだ。
「(コンチクショー!........うっ…..)」
再び、エヴァンジェリスト氏の脳裏に、下宿の近くの青の薬局で目にしたオシャレな小箱が浮かび、氏の股間は下着に擦れる程となり、思わず『呻き声』を発してしまいそうになった。
「オン、お茶飲む?」
(続く)
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