2018年5月24日木曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その98]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、20年、30年後の日本では、「ハリルのやるサッカーに全てを服従して選ばれていく、そのことのほうが僕は恥ずかしいと思っている」と発言する本田圭佑とは異なり、「会社に(上司に)服従していく」ことをしないと出世できなくなる為、自分も凄くは出世しないで定年を迎えることになることをまだ知らなかった。


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「オン、お茶飲む?」

ニキ・ウエ子さんは、恋人のオン・ゾーシ氏のことを、2人だけの時は(その時は、エヴァンジェリスト氏もいたが、そこにいないに等しい状況であったのだろう)、『オン』と呼んでいるらしい。

「まだいいよ」

オン・ゾーシ氏は、エヴァンジェリスト氏が聞いたことのない甘い声で返した。

1982年の冬、エヴァンジェリスト氏は、同期の1人であるオン・ゾーシ氏の依頼で、オン・ゾーシ氏がニキ・ウエ子さんと、スキー場に向うクルマ(セダン)に同乗していた(1人、後部座席に座っていた)。

キャンディよりも甘い関係の2人の会話に馬鹿馬鹿しくなったエヴァンジェリスト氏は、『硬直した』体のソノ部分を鎮める為にも眠ることとし、目を閉じた……..

「だってええ….」
「….でもさあ…」

どこか遠くに2人の会話が聞こえる。

「あの時、オンったらあ….」
「ニキだって」
「ふふ」

体のソノ部分は、一向に鎮まりそうではなかった。

『キュ、キュ、キューッ!』






「(うっ…..)」

セダンの前方席の2人の痴話を耳にしながら、うたた寝し、いつの間にか後部座席で横になっていたエヴァンジェリスト氏は、シートの背に体を打ち付けた。

「やべえ」
「大丈夫?」

エヴァンジェリスト氏も目を覚ました。

「(生きている)」
「ごめんね、エヴァさん」

オン・ゾーシ氏が、エヴァンジェリスト氏に詫びた。

「スリップしてね。この坂は無理かなあ…..」

セダンは、坂道にあった。やや急なその坂道を登り切れず、スリップして下にずり落ちたようであった。

坂道は、凍結していたようなのだ。



「ああ…..」
「軽井沢のここを通った方が早いんだけどねえ」
「軽井沢……」

と、独り言ちたエヴァンジェリスト氏は、そのまま口を開けていた。


(続く)


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