『京急川崎』の改札を抜ける。乗るのは、『大師線』だ。
『大師線』のホームは、改札を入って正面にある『セブンイレブン』の右手だ。
「京急って、『セブンイレブン』なのね?」
マダム・トンミーが云いたいのは、京急は駅売店を『セブンイレブン』にしているのね、という意味だ。
「ああ」
駅構内に入ると、背後に射るような視線を感じなくなり、ビエール・トンミー氏は、ホッとしていた。
「『セブンイレブン』って、ボクが東京に来た頃にできたんだよ」
そうだ。日本に、『セブンイレブン』1号店ができたのは、1974年である。
それはまさに、ビエール・トンミー氏が、大学浪人生活を送る為に上京した年(1973年)の翌年であった。
「上井草で初めて『セブンイレブン』に行ったんだ。大学生の時だ」
「上井草で?...ああ、エヴァさん?」
「うん、エヴァの奴が上井草に下宿していたからね」
ビエール・トンミー氏の友人であるエヴァンジェリスト氏は、そう、当時、上井草に下宿をしていたのだ。正確には、住所は『下石神井』であったが、最寄駅が『上井草』であった。
「エヴァちゃんがね。『最近、上井草駅前に『小さいスーパー』ができたんだ』と教えてきたんだ」
(続く)