2018年10月19日金曜日

【50,512】マダム・トンミー、夫を救う[その7]






「サキ!」

驚いて目を開けた。七度目だ。マダム・トンミーは、完全に飽き飽きした様子で、ベッドに体を横たえたまま、片肘をつき、背後に頭を回した。

しかし……

「アータ…..!」

夫はただ寝ているだけでなく、震えていた。汗のかき方が尋常ではなかった。


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今井咲子に云われるままにデスクの引き出しを開けた。そこには、確かに手形が入っていた。手形というものは、それまで実際に見たことはなかったが(情報システム部長に手形は不要であったのだ)。

「そこに数字を書くのよ。5万円って」
「(え?いいのか?....これは、会社の手形ではないのか?)」
「何よ今更、いつも、ホテルのフロントで使ってるじゃないの。ふふ」
「(え、え、ええ?....ボクは、咲子と….?)」




股間が疼いた。

「やめてよ、会社でえ」

股間を見た咲子が、甘えるように詰った。

「(いや….あ…..)」
「いいから、早く手形に5万円って書いて」

咲子の云うがままに、手形に『¥50,000』と書こうとしたが、手が震えた。

「あ!」

書き損じた。『0』が『6』のようになった。

「赤線で訂正して、書き直せばいいの」
「え?...いいの?」
「いいのよお!いつもは、あんなに強引なのにい!ふふ」
「しっ!会社で…..」

と口にした時、自分と今井咲子との周囲に、他の部員と他の部署の社員たちが立っていることに気付いた。

「いや….いや、ちが、違うんだ。咲子とは….ああ、いや、今井君とは何も….」
「アナタ、酷い!アタシと何もないなんて、酷い!」
「いや、ボクには妻が…..」

他の部員と他の部署の社員たちは、ボクの顔を睨みつけている者、手形を手に取る者がいた。

「は!」

鈴子もいた。もう退社したはずので浦野鈴子もおり、ボクの股間を覗き込んでいた。

「スズ……..ううーーーーーー!」

顔から、身体中から汗が吹き出し、ボクは失神した。


(続く)



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