2018年10月20日土曜日

【50,512】マダム・トンミー、夫を救う[その8=最終回]







「スズ……..ううーーーーーー!」

驚いて目を開けた。八度目だ。マダム・トンミーは、完全に身を起こし、横で寝ている夫の方に体を向けた。

「アータ…..!」

マダム・トンミーは、ベッドの上で、夫のパジャマの上を脱がせた。絞れば汗が落ちる程に、パジャマが濡れていた。


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「て…が….た….ああ、ううーーーーーー!」

マダム・トンミーは、夫のパジャマの下も脱がせた。股間から異臭がした。

「うっ!」

噎せたが、下着も取り、タオルで夫の全身を拭いた。股間だけは、『事情』があり、拭くのに少し苦労した。

「ううーーーーーー!違う、違ううううううう」
「アータ!」

マダム・トンミーは、裸の夫を抱き締めた。

「アータ、もういいのよ」

自分の胸に夫の顔を埋め、夫の頭を撫でた。

「アータ、もう会社は辞めてるのよ。もう苦しまなくていいの」

夫は、一流会社に勤務し、もう5年前に(2013年に)リタイアしているのだ。

「でも、色々あったのね」

そこそこの地位にもつき、会社のマドンナと云われた自分と結婚もし、会社で特段の苦労をしたとは思っていなかった。

「そうよ、分かるわ。会社ってそういう所なのよね」

完全リタイアし、もうすっかり日々、退屈を持て余しているだけの老人と思っていたが、夫はまだ、会社勤めのストレスから解放されていなかったのだ。

「ごめんなさい、気が付かなくて」

マダム・トンミーは、涙ぐみながら、夫の顔をさらに強く自分の胸に押し抱いた。



「うっ!」

ビエール・トンミー氏は、意識を失ったまま、噎せた。

「(….な、なんだ、この匂いは?咲子の香水ではないな。…でも、安心する匂いだ)」

引きつっていたビエール・トンミー氏の顔が緩んだ。

「アータ….あら、少し落ち着いた?」

マダム・トンミーは、夫の頭を撫で、髪にキスをした。

「ん…?でも、何かしら、サキ、とか、スズとか…..」


(おしまい)



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