「ゴー!」
驚いて目を開けた。そして、マダム・トンミーは、ベッドに体を横たえたまま、片肘をつき、背後に頭を回した。
「アータ…..」
夫であった。夫が寝ていた。夫は、汗をかいていた。酷い寝汗であった。
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「ただいま…….」
ドアを開け、か細い声でそう云った。
玄関で靴を脱いでいると、
「ああ、ビエールかい?」
母親だ。靴を履き直して、外に出ようかと思った。
「アータ!」
背後から妻が声をかけてきた。
「あ…..ああ…..」
「どうするのよ!?」
「あ…..ああ…..」
「今日、大丈夫なの?」
「あ…..ああ…..いやあ、そのお…..」
「お母様、楽しみにしてらしてよ」
上がり框に尻をつき、項垂れた。
(続く)
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