川崎駅北口を出て、京急川崎駅方面に向かうエスカレーターを降り、その先にある横断歩道を渡る。
『パリミキ』前を通り川崎フロンティア・ビルを左折すると、崎陽軒の店舗が見える。
「やっぱり崎陽軒よねえ」
「え?」
妻の問い掛けに、ビエール・トンミー氏は、上の空であった。
横断歩道で信号待ちをしている時、南武線の中にいた『内田有紀』が、こちらを見た。いや、見たような気がしたのであった。
娘らしき中学生くらいの少女を連れた『内田有紀』は、いい匂いがした。
「(いや、似ているが違う。『内田有紀』ではない)」
信号が青に変り、横断歩道を渡る時、股間に『異変』が生じた。
「崎陽軒のシウマイ弁当って、ホント美味しいわ」
「あ…ああ、美味しいねえ」
股間の『異変』のせいで歩き難く、歩が遅れていた。しかし、先を行く妻を追いながら、眼は、『内田有紀』を探していた。
「(あ?どこに行ったのだ?)」
横断歩道を渡る時、人混みの中に『内田有紀』を見失っていた。
「シウマイは臭うけど、あの味には替えられないわ」
「(うっ!止めてくれ!シウマイの臭いがしてきたではないか。折角、『有紀』さんの芳しい匂いがしていたのに…..)」
京急川崎駅前の横断歩道で再び、信号待ちをする時、妻に悟られぬよう、左右に視線を送った。
「いっ!」
思わず声を出した。
「ん?何か、云った?」
「んんん。いや、何も…..」
なんとか妻は誤魔化したが、あるご婦人に睨まれたのだ。
(続く)
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