2018年10月18日木曜日

【50,512】マダム・トンミー、夫を救う[その6]






「エン!」

驚いて目を開けた。六度目だ。マダム・トンミーは、やや飽き飽きした様子で、ベッドに体を横たえたまま、片肘をつき、背後に頭を回した。

「アータ…..!」

夫はただ寝ているだけでなく、少し震えていた。汗は、顔だけではなく、首筋からも出てきていた。


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「(鈴子…….鈴子は、ヨカッタア……)」
「でも、アタシの方が、もっとイイでしょ。ふふ」
「(ああ、そうだ。咲子の方が、イイ…..ん?)」
「だから、アタシに乗り換えたのよねええ。ふふ」
「(ああ、そうだ。….だから、鈴子は。でも、咲子の方が…..)」
「でしょ。今夜も、いいわ。ふふ」
「(??.....咲子は、どうしてボクの心の声が聞こえているんだ?)」

自分が、また眠りに落ちていることに気付いていた。

「とにかく、5万円払って下さい!」

眼を開けた。部下の今井咲子が、デスクの横に仁王立し続けていた。

「いやあ、急に云われても…..」
「部長なんだから、5万円くらいお持ちでしょ!」

さっきまでとは随分、態度(というか、言葉つき)が違う。

「(いや、お金の管理は妻で、財布にはいつも3,000円しか入っていない。それに、母に借りた512円もまだ返せていないのに)」
「困りましわたねえ」

と、今井咲子は、身を屈め、耳元で囁いた。また、香水が鼻先に漂った。

「引き出しを開けて。手形が入っているわ」





(続く)



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