「(.......ん?)」
視線を感じた方を視る。
「(な、な、な…….んだ?)」
武蔵溝ノ口を出たばかりだ。
「どうしたの、アータ?」
妻は、夫ビエールに訊いた。
「…ん?......いや……南武線って久しぶりだから」
ビエール・トンミー氏は、並んで席に座る妻の方に振り、答えたが、回答になってはいなかった。しかし、妻は気にした様子ではなかった。
「そうね。快速があるのねえ」
「ああ…….」
夫の反応は、気のないものであったが、それも仕方がない。
「(一体、なんなんだ?.....誰だ?)」
再び、視線を感じた方を視たが、誰がこちらを見ているでもなかった。
「南武線って、もっと田舎な路線かと思ってたけど、そんなことないわねえ」
「ああ…….」
まだ車両内に視線を回していたが、その時……..
「っ…..!」
中学生くらいの少女を連れた中年の女性が、こちらを向いた。
ビエール・トンミー氏は、股間を抑えた。
(続く)
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