(夜のセイフク[その80]の続き)
教師たちも見合った。
「なんですかいのお、『夜のセイフク』いうて?」
「大丈夫かいねえ?」
「『夜のセイフク』いうても、ウチには定時制はありませんしのお」
「看護科の『セイフク』のことではないじゃろうねえ」
1970年の広島県立広島皆実高校の体育館であった。その日は、弁論大会の日で、全校生徒が体育館に集合していた。
1年1ホームから順に弁論が進み、1年7ホームの番となった(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。
司会の先生が発した、
「『夜のセイフク』!」」
という、1年7ホームの弁論のタイトルが、波紋を呼んでいた。
「イシバシ先生….」
と、同僚の教師たちの視線を浴びる1年7ホームの担任の『石橋基二』先生だけは、泰然とされていた。
『イシバシ先生』だけは、知っていたのだ。『夜のセイフク』の内容を。
そして、ざわめきの中、体育館のステージには、1年7ホームの弁論者が、ステージの袖から登場して来た。
その姿に、体育館内のざわめきは増した。
(続く)
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