ビエール・トンミー氏は、友人に感謝した。
「(エヴァちゃん、君のお陰だ。君のことを思うと、うまい具合に、アソコも『萎える』)」
南武線の座席に座るビエール・トンミー氏は、股間を抑える必要はもうなくなっていた。
「(エヴァちゃん、君のお陰だ。君から聞いた山口瞳さんの話をしていれば、『内田有紀』の方を視ることも我慢できる)」
そうこうするうちに、南武線の快速は、川崎駅に着いた。
トンミー夫婦は、乗っていた電車の先頭車両の方に行き、更にその先にある上りエスカレーターに乗った。
「ここを上がると、川崎駅北口なんだって」
「あ、そう」
「今年(2018年)、出来たんだそうだ」
北口改札を出ると、真新しい店々があった。
「あら、綺麗ねえ。川崎駅って、こんなんだったかしら」
「ラゾーナはいいけどね」
駅に隣接するショッピングパークの『ラゾーナ川崎』には、妻とクルマで来たことがあった。
「ラゾーナって、色々なお店があるものねえ」
「広場もあるし…..ああ、エヴァちゃんが、いつかあの広場で、『ライブ』やろうか、って云ってたなあ」
「何のライブ?」
「ああ、そこが問題だ。エヴァちゃんは、そこのところには触れず、ただ『ライブ』やろうか、って云うのだ」
「あの広場では、歌手がよく『ライブ』しているのよねえ」
川崎席北口を出て、京急川崎駅方面に向かうエスカレーターへと歩いていた。
「ほら、エヴァちゃんて、ずっと石原プロ入るって云ってるだろ。石原プロ入りして、俳優もするけど、歌手もする、と云っていたから、歌手として『ライブ』するつもりなんだろうなあ。まあ、あと半年もすると、65歳で再雇用も満了となる老人の妄想さ」
「いいんじゃない」
「え?」
「だって、アータ、エヴァンジェリストさんが芸能界入りしたら、マネジャーになる、って云ってたじゃない」
「あ、ああ」
「アータも、会社を辞めてもう5年も家でゴロゴロしてるんだから、エヴァンジェリストさんのマネージャーでもした方が健康にいいわ。アータには、もっともっと長生きして欲しいもの」
「え、そうかあ?」
妻の意外な言葉に多少狼狽えていた時であった。
「(.......ん?)」
また、あの視線を感じた。南武線で感じたのと同じ視線だ。
(続く)
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