(夜のセイフク[その79]の続き)
放送劇『されど血が』の放送が(『放送』と云っても、ホームルームでテープを流しただけであったが)、異次元での出来事であったことではないか、と思われることさえなくなった頃、エヴァンジェリスト君は再び、同級生たちを認知的不協和な状況に陥し込むことになった。
いや、広島皆実高校の生徒全員を、いやいや、教師たちも含めて広島皆実高校全体を認知的不協和な状況に陥し込むことになったのだ。
「『夜のセイフク』!」
そのタイトルが発表された時のざわめきをビエール・トンミー君は、48年後の今も(今は、2018年である)、忘れられない。
1970年の広島県立広島皆実高校の体育館であった。その日は、弁論大会の日で、全校生徒が体育館に集合していた。
1年1ホームから順に弁論が進み、1年7ホームの番となった(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。
司会の先生は確かに、
「『夜のセイフク』!」
と云ったのだ。
その弁論大会のタイトルらしくないタイトルに、生地たちはざわめきながら、互いに顔を見合った。
「なんねえ、『夜のセイフク』いうて?」
「うーん、なんか分らんけど、なんかイヤラシイ感じがするねえ」
「ほうか、スケベな話が聞けるんか?」
「そりゃ、いけんじゃろ」
「ほいでも、『夜のセイフク』でえ」
(続く)
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