(住込み浪人[その135]の続き)
「やります!」
カメラが、『サトミツ』を大映しにした。EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』である。『テイトー』チームは既に、芸能人チームに勝利していたはずであったが、プロデューサーからの指示として、スペシャル・チャレンジという極めて強引な追加問題の要請を、『サトミツ』は受けて立つこととしたのだ。
「それでこそ、『サトミツ』です!」
司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーのしたり顔は、視聴者の反感を買うものであったが、そこはそれ、ナンカイノー・アメカイノーの立場は、プロレスの悪役と同じであったのだ。悪役がいるからこそ、ベビーフェースが引き立つのだ。
「(いいわ、負けるもんですか!)」
と、釣りあがった『サトミツ』を見た『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、いや、彼の股間が、『反応』した。
「(んぐっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の股間は、『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』に『潮汐ロック』されているのだ。
「(しかし…….)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の理性は、冷静であった。
「(ボクの意向は訊いてくれないのか?ボクが、もう戦いは嫌だ、と云ったらどうなるのだ?まあ、そうは云わないが)」
と、俯き、視線を自らの股間に移した。
「(もう少し『サトミツ』を間近に感じていられるんだもんなあ、お前よ)」
その問いに、股間は応える。
「(んぐっ!)」
だが、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の理性は、あくまで冷静であった。
「(どうせ、また、ボクは答えないんだがな。それが美学というものさ)」
視線を暗い観客席に向けた。友人エヴァンジェリスト青年が、そこにいるはずなのだ。
(続く)
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