(住込み浪人[その163]の続き)
「(『だもん』は、気持ち悪いが、そうだ、君は正しい)」
少女のように口を尖らせる『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に、エヴァンジェリスト青年は、『上から目線な』言い方をする。
「(『SNCF』は、『エス・エヌ・セー・エフ』であり、それは、『フランス国鉄』であり、そして、その正式名称は、『Société Nationale des Chemins de fer Français』である)」
エヴァンジェリスト青年は、OK牧場大学の学生食堂の2階の教員と大学院生用の特別食堂の手摺から顔を出しており、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、下の一般学生用の食堂にいたので、エヴァンジェリスト青年の『姿勢』は、まさに『上から』であったし、エヴァンジェリスト青年の『言葉』は、口から出たものではなく、『目線』で語ったものであったので、まさに『上から目線な』言い方であったのだ。
「(だが……だが、だ)」
『上から目線』で一方的に語ってくる友人に辟易したように、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、更に口を尖らせる。
「(フランス語を知らない君が、どうしてそんなに『SNCF』に詳しいんだ?)」
エヴァンジェリスト青年の『言葉』は、それは質問ではなく、詰問であった。
「(だって、『フランス語経済学』でボクは、『優』を取ったんだもん!.....んん?『取った』?....過去形?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、尖らせていた口を、だらしなく緩めた。美青年ぶりも台無しであった。
「(そうさ。君は、『フランス語経済学』で『優』を取ったんだ)」
「(いや、でも、ボクは、まだ『フランス語経済学』なんて習ったことはない。え?どういうことだ?)」
「(自分のことを他人に訊くのか?ふふ。君は、OK牧場大学文学部に入学したばかりのボクが今、文学研究科フランス文学専攻の修正課程にいるなんてあり得ない、と云ったが、君自身、あり得ないことをしているではないか)」
「(ええ!?なんだ、これは一体、どういうことなんだ!?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、両手で頭を抱え、そのまま頭を揺すった。
(続く)
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