(住込み浪人[その164]の続き)
「(ふふ。これは、誰かの『インモー』かもしれんな。ふふ)」
OK牧場大学の学生食堂の2階の教員と大学院生用の特別食堂の手摺から顔を出したエヴァンジェリスト青年は、口の端を歪めた。
「(え!『インモー』!また、『インモー』か!?でも、何が『インモー』なんだ?誰の『インモー』にしろ、『インモー』なんて好きじゃない!)」
1階の一般学生用の食堂から、2階の特別食堂の友人を見上げる『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、それまでだらしなく緩んでいた口をキッと結び、友人に食ってかかった。
「(君は、やはり『インモー』の大家だな)」
「(え?)」
「(ボクは、『インモー』なんて云ってないぞ。『陰謀』と云ったんだ。しかし、君は、それを『インモー』と聞き取った。君は、『インモー』の大家だからだ)」
「(いや、そんなものの大家ではない!『インモー』なんて嫌だ!『チーズインモーハンバーグ・カレー』なんて食べたくない!)」
その時、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の前に、手も口もつけられず、置かれたままになっていたカレーが、動いた!ライスにかかったルーの中のジャガイモが、ほんの少しだが、ライスから滑ったのだ。
「(では、ビエールよ、君に訊く。これは、何だ?)」
エヴァンジェリスト青年は、2階の特別食堂の手摺から身を乗り出し、1幅の絵を階下に向けた。
「(『裸のマハ』だ!フランシスコ・デ・ゴヤの『La Maja desnuda』だ!)」
「(さすがだな。しかし、君はどうしてこれを『裸のマハ』、フランシスコ・デ・ゴヤの『La Maja desnuda』だと知っているんだ)」
「(だって、それは、『La Maja desnuda』だもん!)」
「(では、この絵に描かれたもので、描かれた当時、大きな問題となったものは、何だ?)」
(続く)
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