『少年』は、翠町にあった済世愛児園という幼稚園の時代、済世愛児園前まで行ったものの引き返すことが幾度もあった宇品にあった自宅は長屋で、貧しい暮らしであったが、ハブテン少年ではあったのだ(いや、当時は、まだ『幼児』と云うべきであったであろうが)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その8]の続き)
「(お母ちゃんに云わんといけん)」
『ミドリチュー』の正門を出て、帰宅しながら、エヴァンジェリスト少年は、そのことしか考えていなかった。
「(なんで、ブラスバンドに入らんといけんのんじゃ!)」
エヴァンジェリスト少年は、心の中でハブテまくっていた。
「(ブラスバンドなんか、興味ないけえ!)」
音楽のムジカ先生に、ブラスバンド入りすることを強要されたのだ。それを拒否できなかったのではあったが。
「(トロンボーンのなにがええんや!?)」
おおきょうニイチャンが、楽しそうにトロンボーンを吹く姿が脳裏に浮かぶ。おおきょうニイチャンは、国泰寺高校でもブラスバンドに入り、そこではトロンボーンもフルートも吹いていたが、『ミドリチュー』でも、そうブラスバンドに入っていたのだ。
「明日から、お前、ブラスバンドに入れ」
と、ムジカ先生が、エヴァンジェリスト少年に云ったのは、エヴァンジェリスト少年が、『おおきょうニイチャン』の弟であったから、なのであろう。
(続く)
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