(住込み浪人[その169]の続き)
「(そうだ。ボクは、このところの種々の不思議、矛盾に気付いたのだ。しかし、それもこれも、多分、『住込み』二浪目というストレスから来る一種の錯覚だろうということも想像はついているのだ)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、久しぶりに眼の前にある『チーズインモーハンバーグ・カレー』かなんだか分からないが、兎に角、OK牧場大学の学生食堂のカレーに視線を落とした。
「(しかし、今は、錯覚であろうとなかろうと、そんなことにかかずらわっている場合ではないのだ。ボクは受験勉強をしないといけないんだ)」
カレーに視線を落としたものの、それを食べようとはしない。妄想かもしれないし、幻覚、錯覚かもしれいないが、万が一にも『チーズインモーハンバーグ・カレー』であったら、という疑惑がある限り、それを口にする気にはなれない。
「(ミニスカートのアイドル歌手『アマゾネス・ジャン』のことも、『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』のことも、もうどうでもいいのか?)」
2階の特別食堂の手摺から顔を出しているエヴァンジェリスト青年は、友人を挑発する。
「(ああ、どうでもいい!.....んぐっ!)」
股間だけは、どうでもよくはないようであった。
「(『カレー担当のオバチャン』の『サキ』さんのこともどうでもいいのか?)」
「(あんなオバチャン、ハナから問題ではない!)」
「(では、どうしてまだ、君が今着ているパジャマのズボンのポケットにオバチャンの連絡先電話番号が書かれた紙を持っているのだ?)」
「(へっ?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、パジャマのズボンのポケットに手を入れた。
「(は!?)」
そこには、一片の紙が入っており、それを取り出した。
「(うっ!)」
(続く)
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