『少年』は、翠町にあった済世愛児園という幼稚園に入園した頃も、ハブテン少年ではあったのだ(いや、当時は、まだ『幼児』と云うべきであったであろうが)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その5]の続き)
「(ああ、オカアチャンが、じゃけえか)」
『その時』はまだ広島弁であったエヴァンジェリスト少年は、自分の母親が『ママさんバレー』をしているから、自分もバレーボールのクラブに入るのか、とムジカ先生は訊いてきたのだと察した。ムジカ先生は、母親のことをよく知っているのだ。
「いいえ」
母親のバレーボールの試合は、毎回応援に行っていたし、バレーボールの試合を見るのは面白かったが、自分自身がバレーボールをちゃんとしたことはなかったし、しようと思ったことはなかったのだ。
「ほうか。ほいじゃったら、お前、ブラスな」
「へ?」
『美男子』少年らしからぬ間抜けな反応だ。
「明日から、お前、ブラスバンドに入れ」
「え?」
ムジカ先生は、エヴァンジェリスト少年を睨みつけていた。少なくともエヴァンジェリスト少年には、そう見えた。
(続く)
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