2019年8月3日土曜日

住込み浪人[その167]







「(いや、『テイトー王』に出演なんかしてないぞ!)」

OK牧場大学の学生食堂の1階から、2階の特別食堂を見上げて、声にはなっていないが、何やらブツブツと口を動かす『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を、周囲の学生たちは、不思議そうに見ている。

「(いやいや、出演するもしないも、『テイトー王』なんてクイズ番組はないんだ!)」

2階の特別食堂の手摺から顔を出したエヴァンジェリスト青年に向け、言葉を続ける。

「(ああ、そもそも『テイトー』(帝立大学東京)なんて大学はないんだ!......あれ?なんだか、同じことを繰り返している気がする…….)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の言葉は、自分に向けられ始める。

「(おかしい!おかしいぞ!過去と未来、現実と非現実とがぐちゃぐちゃに入り混じってい………君の仕業か、君の『陰謀』か?)」
「(何?ボクの『インモー』かだって?)」

エヴァンジェリスト青年は、なんだか嬉しそうだ。

「(巫山戯るな!君の『インモー』なんて、見たくも、嗅ぎたくも、触りたくも、食べたくもない!)」
「(ああ、こっちだって、ボクの『インモー』を、見て欲しくも、嗅いで欲しくも、触って欲しくも、食べて欲しくもない!)」
「(茶化すな!君の仕業か、君の『陰謀』か?と云っているんだ!)」
「(何度も云わせるな。『ヒッグス』だ)」
「(ふん!『ヒッグス・シングレット』だろ。だが、『ヒッグス・シングレット』の為せる技なら、そう、未来が過去に干渉するなら、何故、『今』はこんな時代なんだ!?)」
「(はあ?)」
「(これまでタブーであったものが、為政者によって世の中の仕組みに取り入れられてきている。国民は、当初、そのことに異を唱えるが、為政者は、決して一線を超えるものではないとして、国民も、まあ、そこまでなら、と納得する。しかし、為政者は、ほとぼりが冷めた頃に、更にタブーを超えた仕組みを取り入れ、国民も徐々にそのタブーを、タブーであるべきことを忘れ、為政者の『インモー』いや『陰謀』に気付かず、『現状』を容認していくのだ。その結果、未来は、我々が『当初』あり得ないと思っていたことが、何の問題意識もなく存在する世の中になっているはずだ。それでいいのか!?『未来』は、我々のその過ちを認識しているなら、『過去』である『今』に干渉してくれればいいではないか!?)」



「(はあ?君は何を云いたいのか?結局、『インモー』という言葉を使いたいだけのことではないのか?さすが、『インモー』の大家だなあ)」


(続く)



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