『少年』は、翠町にあった済世愛児園という幼稚園の時代、済世愛児園前まで行って、宇品にあった家に引き返し、家の裏口に蹲っていることが幾度もあった情けいない子ながら、ハブテン少年ではあったのだ(いや、当時は、まだ『幼児』と云うべきであったであろうが)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その7]の続き)
「(どうしょう?)」
体はまだ小学生と殆ど変わらず、詰襟の学生服を着ているというよりも、大きめな詰襟の学生服に着られている、といった方が合っているエヴァンジェリスト少年の幼い心は、不安と不満にかき乱されていた。
「(おおきょうニイチャンのせいじゃ)」
エヴァンジェリスト少年の怒りは、長兄に向けられた。音楽のムジカ先生に、ブラスバンド入りすることを強要され、それを拒否できなかったのだ。
「(おおきょうニイチャンが、トロンボーンなんかやっとるけえ、こうなったんじゃ)」
エヴァンジェリスト少年は、男3兄弟の末っ子であった。
「(なんで、おおきょうニイチャンは、『おおきょうニイチャン』なんかのお?)」
と思うことはあったが、長兄が、『大きいニイチャン』であり、それがなまって『おおきょうニイチャン』となったのであろうと推定できたのは、高校生になってからであったように記憶する。
『その時』は、とにかく、
「(おおきょうニイチャンが、いけんのんじゃ)」
と、エヴァンジェリスト少年は、心の中でハブテテいた。
(続く)
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