2019年8月8日木曜日

住込み浪人[その172]







「(んぐっ!.......いやいや、変だ。変なんだ。なんだ、その『んぐっ!』は!?『んぐっ!』に使う、ってどういうことだ?)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、動揺を隠せなかった。一方、OK牧場大学の学生食堂の2階の特別食堂の手摺から顔を出し、1階にいる友人のその様子を見下ろしているエヴァンジェリスト青年は、落ち着き払っていた。

「(それは、こちらのセリフだ。『んぐっ!』してるのは、君だからな)」

OK牧場大学の学生食堂の『カレー担当のオバチャン』の連絡先が書かれた紙を『んぐっ!』に使っていることを、友人のエヴァンジェリスト青年に見透かされたのだ。

「(いや、ボクは、『んぐっ!』させられているのだ。そもそも、『んぐっ!』って何か知らんぞ。そんなオゲレツなものはボクは知らないぞ)」
「(『んぐっ!』』が、何であるかは知らないが、オゲレツだとは知っているのか?ふふ。君らしくもない論理矛盾だな)」
「(構うものか!どうせ、何もかも矛盾だらけではないか)」
「(おお、開き直りか?今の君は、それどころではない、ということか?)」
「(おお、そうだ、そうだ)」
「(君は、そう、『住込み浪人』で、しかも二浪目だものな)」
「(そういうことだ。このところの妙な現象、矛盾だらけの現象は多分、『住込み』二浪目というストレスから来る一種の錯覚であろう。だが、錯覚か否かは問題ではない。そんなことにかかずらわっている場合ではないのだ。ボクは受験勉強をしないといけないんだ)」
「(ふふ。ふふふ。君はまだ分っていないのだな)」
「(いいか、理解不能なことがあっても、それはどうせ錯覚なんだ。それよりも受験勉強だ!)」



「(ああ、『住込み浪人』としてな。ふふ)」
「(もういい。判り切ったことはもういい!)」
「(ふふふ。判り切ったことか!ふふふ。では、ビエールよ、最後に君に訊こう)」
「(は?)」
「(君は今、自らを『住込み浪人』だと云うが、何なんだ、『住込み浪人』って?)」
「(ええ?!)」


(続く)


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