2019年8月5日月曜日

住込み浪人[その169]







「(『自覚している』だって?君は判ったようなモノ言いをするが、まだ判り切っていない)」

OK牧場大学の学生食堂で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の前に置かれたままのカレーは、すっかり冷めてしまい、震えが出てもおかしくない程であったが、無我の境地に入った禅僧のようにピクリともしない。

「(判ってるさ。二浪の『住込み浪人』のボクには、もう後がないんだ。今度こそ、ハンカチ大学に合格しないといけないんだっ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の唾が、カレーのルーに飛んだ。

「(ああ、君は判っていないんだ。君は、まだ習ってもいない『フランス語経済学』の『経験』から『SNCF』を知っているということの矛盾に気付いた)」

2階の特別食堂の手摺から顔を出しているエヴァンジェリスト青年は、1階にいる友人の唾が、カレーのルーに入ったのは見たが、友人自身が食べる(はずの)カレーだから、まあ構わないだろうと判断し、そのことには触れない。

「(ああ、そうだともっ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の唾が、またカレーのルーに飛んだ。

「(まだ受講してもいないオープン・カレッジの●●●子先生の『西洋美術史』で学んだ裸のマハ』の『インモー』論争を知っていることの撞着にも気付いた)」
「(ああ、そうだとも。早く●●●子先生にお会いしたいものではあるが)」
「(EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』で出たばかりの『SNCF』に関する問題と裸のマハ』に関する問題をボクからも出されたことに、不思議な無限ループ的なdéjà-vu(デジャヴュ)感を抱きつつも、そもそもEBSテレビなんてテレビ局がないこと、従って、当然、『テイトー王』なんてクイズ番組もないこと、更には、『テイトー』(帝立大学東京)という大学もなければ、一応、国民主権の今のこの国に『帝立』なんて概念もないことに気付いたのだ)」


「(くどい言い方だが、まあ、そういうことであるな)」
「(そして、このような、過去と未来、現実と非現実とがぐちゃぐちゃに入り混じってい妙な現象が『ヒッグス・シングレット』の為せる技であるなら、何故、『今』はこんな時代なんだ、という社会問題的、哲学的、宇宙物理学的なアイロニーさえも抱くに到った)」


(続く)



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