『少年』は、翠町にあった済世愛児園という幼稚園似通う最後の年、親は翠町に土地を買い、一戸建て住宅を建てたものの、周りは蓮田だらけで、後に高級住宅街になるとは予想だにできない環境に住むことになかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(いや、当時は、まだ『幼児』と云うべきであったであろうが)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その15]の続き)
「ここを咥えるんで。マウスピース」
ヒザマゲ先輩は、エヴァンジェリスト少年にアルト・サックスの首からのぶら下げ方(ストラップを首にかけるのだ)、その上での両手での持ち方を教えた後、アルト・サックスの『し』の字の起点にある部分を咥えることを教えた。そして、その部分が、『マウスピース』と呼ぶものであることを教えた。
「はい」
と云って、咥えるところを見ると、竹がつけられていた。
「それ、リード云うんで」
エヴァンジェリスト少年は、恐々とマウスピースを咥え、リードを舌にあてた。
「(竹じゃ)」
タケノコを食べたことはあったが、竹は食べたことはなく、舐めたこともなかった。しかし、視覚が味覚にそれ(リード)が竹であることを教えた。
「(なんで、竹を舐めんといけんのんかいのお?)」
と、思ったが、ハブテン少年は、それを口にすることはなく、その日から、ヒザマゲ先輩にサックスの吹き方を教わっていったのであった。
(続く)
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