(住込み浪人[その143]の続き)
「(では、この過去と未来とが混濁したような訳の分らない状況は一体、どういうことなんだ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』の観客席にいる友人エヴァンジェリスト青年を睨みつけた。
「(だから、ヒッグス・シングレットだよ)」
エヴァンジェリスト青年は、あくまで冷静である。
(参考:住込み浪人[その132])
「(未来は過去に干渉するのさ)」
エヴァンジェリスト青年の言葉は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の理解を超えていた。
「(エヴァ、き、き、君は、どこから来たんだ?!)」
「(んん?ボクは、どこにもいるのさ、過去にも未来にも現在にも、ここにもそこにもあそこにも、な。ふふ)」
「(意味が分らない……でも、兎に角、ボクは勝ったんだ。ボクの美学に反してはいるが)」
自らを、『勝った』という現実に引き戻すことで、友人の理解不能な呪縛から逃れたつもりであったが、甘かった。『サトミツ』好きの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、砂糖よりも、蜜よりも甘かったのだ。
「おや、どうしましたか、ビエール・トンミー君?」
『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、声をかけてきていた。
「『裸のマハ』のモデルの一人、アルバ公爵夫人の正式な名前が、『マリーア・デル・ピラール・テレサ・カイエターナ・デ・シルバ・イ・アルバレス・デ・トレド (María del Pilar Teresa Cayetana de Silva y Álvarez de Toledo)』であることを、どうして知っているのか、答えてくれませんねえ。でも、まあいいでしょう。それは問題ではありませんからね」
「(そうだ。問題は既に出され、ボクは正解したのだから)」
「そうなんですよ。問題は、『裸のマハ』のモデルの一人、アルバ公爵夫人の正式な名前は何か、ではないんです!」
(続く)
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