(住込み浪人[その144]の続き)
「え、え、えーっ!」
BSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCで、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず叫び声を上げた。
「そうなんですよ。本当の最終問題は、『裸のマハ』のモデルの一人、アルバ公爵夫人の正式な名前は何か、だとは、私は、云っていませんよお」
『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーは、意地悪なくらい冷静だ。
「(そ、そ、そんな馬鹿な!『裸のマハ』のモデルの一人、アルバ公爵夫人の正式な名前を答えるのが問題ではなかった、なんて、引っ掛け問題だったのか!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ナンカイノー・アメカイノーをグレープバイン・ホールドで締めあげたい気持ちに駆られた。
グレープバイン・ホールドが、どんな技であるのか、知らなかったし、どんな技であれ、どうしてグレープバイン・ホールドなるプロレス技の名前を自分が知っているのか、分らなかった。しかし、今はそんなこと、どうでもよかった。
「本当の最終問題は、『裸のマハ』のモデルの一人、アルバ公爵夫人の正式な名前は、『マリーア・デル・ピラール・テレサ・カイエターナ・デ・シルバ・イ・アルバレス・デ・トレド (María del Pilar Teresa Cayetana de Silva y Álvarez de Toledo)』ですが、この絵に描かれたもので、描かれた当時、大きな問題となったものは、何か!?さあ、早押しです!」
そう云ってナンカイノー・アメカイノーが、右手を上げるよりも早く、
「ピンポーン!」
早押しボタンが鳴った。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿