(住込み浪人[その139]の続き)
「(な、な、なんてことだ!ボクは知らないぞ)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、自らの右手を睨みつけた。EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』の本当の最終問題で、自身の意思とは関係なく、勝手に早押しボタンを押した右手である。
「(どうするんだ?!)」
西洋美術に興味はなくはなかったし、ゴヤの『裸のマハ』も見たことはあった。でも、ただそれだけなのだ。『裸のマハ』ことは何も知らない。
「(股間の奴は、いつも勝手な『行動』をとるが、右手よ、お前もか!)」
引きつった表情で右手を凝視める。
「おお!『住込み浪人』ビエール・トンミー君、もうお判りですか!」
『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、驚いた。
「さあ、お答え下さい!」
その時、観客席の暗闇の中から、一瞬だが、ほんの一瞬だが、何かが光り、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の目を射た。
「うっ!」
(続く)
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