(住込み浪人[その138]の続き)
「フランシスコ・デ・ゴヤが描いた『裸のマハ』のモデルが誰かは諸説ありますが」
EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』の本当の最終問題を、司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが読み上げる。
「その一人、アルバ公爵夫人の正式な名前は…..」
その瞬間、芸能人チームの席に座る『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の右手が動いた。
「ピンポーン!」
早押しボタンが鳴った。
「(え?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、自らの行動に驚いた。いや、自らの右手の勝手な行動に驚いた。
「(え?)」
『サトミツ』も驚いた。
「(もう、判ったの?『テイトー』に合格したのに入学辞退したというのは、本当だったのね?!)」
『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に美貌だけではなく、知性もあることを認めざるを得なかった。
「(んぐっ!)」
と、一種の快感を伴う敗北感を感じながら…….
(続く)
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