(住込み浪人[その137]の続き)
「西洋美術史の問題です!」
EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、本当の最終問題を告げ始めた。
「(え?西洋美術史?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、美術に、それも特に、西洋美術に興味がなくはなかった。
「(でもなあ、西洋美術の歴史はなあ…..)」
回答する気もなかったことを忘れ、困ってしまっている様子が、顔に出た。
「(あら?)」
『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、敵の僅かな表情の変化を見逃さなかった。
「(ふふ。得意じゃないのね、西洋美術史は)」
『サトミツ』の強張っていた両肘と両膝が、少し緩んだ。
「(でも、少し困った顔も可愛いわあ。んぐ!)」
緩んだ肘と肘、膝と膝との間から、靄のようなものが出てきたのを『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼だけは捉えた。そして、その靄のようなものは、スタジオC中に拡がっていった。
「おい、なんだか、臭くねえか?」
もう一人の司会者、ヒロニが、『異変』に気付いたが、ナンカイノー・アメカイノーは、構わず、問題を読み上げた。
(続く)
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