(住込み浪人[その153]の続き)
「(どうして…..どうして、また、ここに『サトミツ』がいるんだ?)
OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』を出たところにいたその女子学生が、本当に『サトミツ』であったかどうかは定かではなかった。しかし、動揺した『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、『インモー』という言葉を発したその女子学生を『サトミツ』だと確信したのだ。
「(どうして、ここでもまた『インモ-』なんだ。あれは、夢だったはずだ)」
その女子学生が発した言葉は、『インモー』ではなく『インナー』であったのだが、『当時』はまだ一般に『インナー』という言葉は使われていなかったので、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、『インモー』と聞き間違えたのも無理はなかった。
「(んぐっ!)」
クイズ番組『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』と、そこにいる彼女につながる『インモー』という言葉に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の股間は、『反応』してしまった。
「なーに、あの人?」
『サトミツ』、いや、チェック柄のロング・スカートに七分袖のミルク・ティー色のニットのセーターを着た女子学生は、明らかに嫌悪の感情を含んだ声を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向けた。
「(う、うーっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、頬を紅に染めた。
「なんだい?」
チャコールグレイのジャケットの下に白いV字のシャツを着た男子学生が、訊いた。
「アソコよ!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、女子学生に目を向けなかったが、彼女が自分の体のある部分を指差しているが分っていた。
「(ちが、違ううー!)」
背中が、女子学生の視線の矢に射られるのを感じながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、逃げるようにその場から立ち去った。いや、逃げるように、ではなく、実際、逃げたのだ。何も悪いことをした訳でもないのに。
(続く)
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