『少年』は、翠町にあった済世愛児園という幼稚園を卒園する頃から『広島カープ』を知ったが、その当時、『カープ』は万年Bクラスで弱いチームであったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
************************
(ハブテン少年[その19]の続き)
「(つまらんのお)」
毎日、そう思いながら、放課後、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)のブラスバンド部でアルト・サックスの練習を続けていたエヴァンジェリスト少年であったが、学校に行のは嫌ではなかった。
「あんたあ、ハブテンさんな」
と、いつも母親に、躾けられていたからではない。
「横から見ても格好ええねえ」
と女子部員たちに憬られていたからでもなかった。そもそもエヴァンジェリスト少年には、そんな女子部員たちの声は聞こえていなかったし、練習する姿を凝視められている自覚もなかった。
「ブオーーーーーーッ!」
エヴァンジェリスト少年が出すアルト・サックスの音は、相変らず酷いものであったが、女子部員たちには、そんなことは関係なかった。
「あの子、リード、ゴミ箱に捨てたんよ」
サックスのリードは、割れる。割れたら捨てる。当り前のことである。しかし……
「あんたあ、拾うたん?」
「キャッ!なに、云うん!?」
「拾うたんじゃろ!」
「拾うとらんよ」
「舐めたん?」
「舐めとらんよ」
「ええねえ。私も舐めたい!」
「拾うとらんし、舐めとらんしい」
「嘘、いいんちゃんなんや。分っとるんじゃけえ」
「そーようなこと、知らん、云うとるのにい!」
女子部員たちは、ブラスバンドの練習がある放課後が待ち遠しかったであろうが、エヴァンジェリスト少年はそうではなかった。
「(早う、明日にならんかのお)」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿