『少年』は、『広島カープ』の『藤井弘』内野手が、長打力はあるものの、1964年-1966年の3年間は打率が2割そこそこであったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その30]の続き)
「(やっぱり、ええ匂いじゃ)」
その部屋は、想像通り、いや妄想通り、いい匂いがした。エヴァンジェリスト少年は、同級生の『クッキー』子さんの家の彼女の部屋にいた。
「(ここじゃったんか)」
『クッキー』子さんの誕生日パーティーに呼ばれたのだ。『クッキー』子さんの家は、翠町の広島大学附属小学校・中学校・高等学校の少し南の方にあった。
「(まあ、ええ…..)」
エヴァンジェリスト少年は、6年前のことを思い出していた。
「(あそこで間違えたけえ、『クッキー』子さんの誕生日パーティーに来とるんじゃけえ)」
そうだった。6年前、広島大学附属小学校の入学試験で、とんでもない失態をしてしまったのだ。
試験会場の壁4面に配置された机に、教員がいて、机の上に置かれた器具等を使い、受験者(子ども)に質問をするのだ。
「さあ、どっちが重いかな?」
天秤の横に立った教員が、少年(6歳である)にそう訊いた。天秤は、向って右側に錘が置かれ、必然的に右側が下がっていた。
普段はシャイで知らない人にはまともに口もきけない男(6歳である)が、その時だけは何故か、元気に答えた。
「こっち!」
少年(6歳である)が指差したのは、左側であった。
「(ブラスバンドは、あんまりのお…….ほいじゃ、あれで今、ええ匂い嗅いどるんじゃけえ)」
エヴァンジェリスト少年は、『クッキー』子さんの部屋で、『クッキー』子さん自身と他の同級生がいる中で、眼を瞑り鼻を少し上にあげ、左右に振って『クッキー』子さんの部屋の、いや、『クッキー』子さんの匂いであっっただろうか、それを嗅いだ。
(続く)
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