2019年9月10日火曜日

ハブテン少年[その26]




『少年』は、『広島カープ』の『外木場義郎』投手が、1965年にノーヒットノーランでプロ入り初勝利を手にしたものの(その後、完全試合1回、ノー弾いとノーランをもう1回達成する大投手になるものの)、1966年は1勝もできなっかのであったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「リョーオモイ!リョーオモイ!」

エヴァンジェリスト少年をそう囃し立てたクラスの男子生徒たちは、今度は、その言葉を『クッキー』子さんに向けた。

「あんたら、やめんちゃいや!」

と、男子生徒たちに食ってかかったのは、『クッキー』子さん自身ではなかった。

「リョーオモイ!リョーオモイ!」

『クッキー』子さん自身は、歯に噛んでいた。

「あんたら、やめんちゃいゆうのにいー!」

『クッキー』子さんに代って男子生徒たちを叱ったのは、いつも『クッキー』子さんと一緒にいる女子生徒であった。そして、それは、エヴァンジェリスト少年の友人にして、互いに好きな女の子を告白しあったエトワール君の『妻』(好きな女の子)であった。

「リョーオモイ!リョーオモイ!」

手を叩きながら、リズミカルにそう囃し立てる男子生徒たちに、エトワール君の『妻』は、手を振りかざして向かっていった。

「んもー!」

『クッキー』子さんもそれに続いた。

「もー、やめんちゃいやー!」

と言葉を発するのは、エトワール君の『妻』であって、『クッキー』子さん自身は、友人の女子生徒と同じように両手をバタバタと振りながら男子生徒たちを追い回していたが、その顔は、どこか嬉しげであった。

「(『クッキー』子さんは、描かれて、嫌なんかのお....?)」

『クッキー』子さんとその友人が男子生徒たちを追う様子を見ていたエヴァンジェリスト少年は、不安になった。まだ、男女の機微というものに通じるには、若過ぎた。

「(『クッキー』子さんと結婚するう思うとったんじゃが……)」

小学6年生の時に、自分の体のある部分から、普段、そこから出る液体とは、異なる色の、それもやや粘着性のある液体が出ることを知りはしたが、まだまだ『子ども』であったエヴァンジェリスト少年にとって、好きな女の子との思いを遂げることは、即、『結婚』(つまり、一緒に住むこと、ただそれだけ)なのであった。



「リョーオモイ!リョーオモイ!」
「もー、やめんちゃいやー!」

エヴァンジェリスト少年は、その好きな女の子が今、眼の前で、自分との仲を揶揄われて男子生徒たちを追い回しているのは、怒っているからなのだと、自分とは『結婚』する意思がないからではないか、と表情を曇らせたのであったが………..


(続く)




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