『少年』は、『広島カープ』の『宮川孝雄』外野手が、代打の切り札として活躍はしたものの、死球が多く、球にわざとあたりに行っていると思われるようになったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その38]の続き)
「(アラン・ドロンみたいだわ)」
『クッキー』子さんの母親は、少年を玄関で迎え入れた時に、ハッとしたのであった。娘の誕生日パーティに来た、まだ中学1年の男子生徒だ。
「(この子なのね。『クッキー』子が好きなのは)」
直ぐにそう分った。そして今、台所で、手作り『クッキー』を食べる他の同級生たちの喧騒の中で独り項垂れる少年を前にし、思う。
「(『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンだわ)」
少年は、ただ、同級生たちが使い、自分も使ってきた広島弁の品のなさに打ちのめされていただけであったが、その様子が、『クッキー』子さんの母親には、アラン・ドロン演ずる映画『太陽がいっぱい』の『トム・リプレー』の憂いに重なって見えたのだ。
「(……まあ!やっぱりね)」
『クッキー』子さんの母親は、娘の視線に気付いた。娘が凝視寝ていたのは、手作り『クッキー』を手にしたまま、それを口に運ばない美男の同級生エヴァンジェリスト少年であったのだ。
「エヴァ君、遠慮せずに食べて」
『クッキー』子さんは、エヴァンジェリスト少年に声をかけた。
(続く)
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