『少年』は、『広島カープ』の『阿南準郎』内野手が、守備力はあり、名前も他で聞いたことのないものであったので、印象深い選手ではあったものの、打力はなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その31]の続き)
「(ほうか、あの時もこうじゃった……)」
1967年、誕生日パーティーで呼ばれた『クッキー』子さんの部屋で、エヴァンジェリスト少年の鼻が思い出したのは、1965年12月、『帰国子女』子ちゃんが、『広島市立皆実小学校』の5年4組の同級生たちを招き、自宅で開いたクリスマス・パーティーでのことであった。
「(ええ、匂いじゃった….)」
『帰国子女』子ちゃんが、英語の本を流暢な英語で読み上げるのを聞き、エヴァンジェリスト君(当時)は、まだ5年生なのに、『帰国子女』子ちゃんと結婚し、子どもが出来たら、その子は『帰国子女』子ちゃんのように英語を喋るようになるのだろう、と妄想していると、『帰国子女』子ちゃんが、英語の本を本棚に戻す時、エヴァンジェリスト君の横を通った。
「(んぐっ!)」
『帰国子女』子ちゃんが自分の横を通った時のことを思い出した瞬間、今は『クッキー』子さんの部屋にいるエヴァンジェリスト少年は、股間を抑えた。
当時も股間が疼いたが、それはまだ疼きと云える程のものではなく、微動であった。いやいや、微動にも到らない微かな、一種の痛みであった。本人も気付かない程の、心地良さを伴った僅かな痛みであった。
しかし、それから2年近く経った今、少しだけ『大人』に近づいたエヴァンジェリスト少年の股間の『異変』はもう、微動ではなかった。
「(んぐっ!)」
それは、少年の成長によるものでもあっただろうし、2年前に『妻』であった『帰国子女』子ちゃんの匂いに、今の『妻』である『クッキー』子さんの匂いが重なり、少年の鼻に香しさが充満したからでもあったのであろう。
「みーんなあ」
台所らしき方から、皆を呼ぶ声がした。
(続く)
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