『少年』は、『広島カープ』の『水谷実雄』外野手が、後には首位打者や打点王のタイトルを取る強打者になるものの、1966年は1打席しかないまだまだの選手であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その41]の続き)
「どしたん?」
同じく『クッキー』子さんの誕生日パーティーに招かれた同級生の女子の一人が、また、エヴァンジェリスト少年に声を掛けた。
「お腹、痛いん?」
両脚をすぼめ、その間に何かを隠すようにしたエヴァンジェリスト少年の様子を見て、腹痛でも起こしたのではないか、と心配してくれたのだ。
「ううん、大丈夫だよ」
エヴァンジェリスト少年は、標準語と云えたものであったかどうかは定かではないが、少なくとも広島弁ではない言葉で返事をした。
「それにしても、あんたら仲ええねえ」
同級生のその女の子は、『クッキー』子さんを見、次にエヴァンジェリスト少年を見て、少し口を尖らせて云った。その子も、エヴァンジェリスト少年を憎からず思っていたのかもしれなかった。
「あんたら、『相合傘』じゃもんねえ」
教室の黒板の裏に、傘マークを書き、その傘の下に、エヴァンジェリスト少年と『クッキー』子さんの名前が並べて描かれた『事件』のことを云っているのだ。
(参照:ハブテン少年[その25])
「『リョーオモイ』じゃけえねえ」
同級生のその女の子は、悔し紛れか、言葉を放ち続けた。
「なに云いよるん」
エヴァンジェリスト少年の言葉が、広島弁に戻った。同級生のその女の子は、構わず続ける。
「『夫婦』なんよねえ」
『クッキー』子さんは、赤面していた。
「(んぐっ!)」
エヴァンジェリスト少年は、『反応』してしまった。同級生の女の子の言葉には、どこか淫靡さがあったのだ。
(続く)
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