2019年9月13日金曜日

ハブテン少年[その29]




『少年』は、『広島カープ』の『田中尊』捕手が、正捕手として守備力は高かったものの、打撃力はなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(『帰国子女』子ちゃん…..)」

ブラスバンドの練習を終え、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)を出て、自宅に戻る途中、エヴァンジェリスト少年は、思い出した。皆実小学校の5年生の時、その日の『クッキー』子さんと同じように、お昼休みに封筒を渡してきた同級生の少女である。

「これ」

と、『帰国子女』子ちゃんは、ピンクの封筒をエヴァンジェリスト君に手渡した(当時は、小学生なので、エヴァンジェリスト少年ではなく、エヴァンジェリスト君だ)。

「(何が書いてあるんじゃろ?『好き』いうて書いてあるんじゃろうか?)」

その時も、エヴァンジェリスト少年はそう思ったのだ。そして、封筒の中身が気になりながらも、下校途中に開封するということはしなかったのだ。


「(そうか、あの時とおんなじだ)」

ようやくdéjà-vu感の正体が分った。

「(ほいじゃけど、まだクリスマスじゃないけえのお……)」



『帰国子女』子ちゃんから渡されたピンクの封筒の中には、クリスマス・パーティの招待状が入っていたのだ。

「(やっぱりラヴレターなんかのお)」

と思うと、体が、体のどこかが急に疼くような感じに襲われた。

「(開けたい!)」

しかし、エヴァンジェリスト少年には、もらった手紙(封筒)を道端で開ける、という感覚はなかった。

皆実小学校では毎年、『学級委員』をするお行儀のいい子であったが、『ミドリチュー』でも今、生活委員を務めているのだ。生活委員たるものが、ラヴレターを路上で開封してはいけないのだ。


(続く)


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