『少年』は、『広島カープ』の『衣笠祥雄』選手が、周知の通り、後に偉大な選手になるものの、入団当初はまだまだな選手であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その37]の続き)
「(恥ずかしい…)」
はしゃぐ同級生の輪の中で、エヴァンジェリスト少年は、独り項垂れていた。『クッキー』子さんの誕生日パーティーに招かれたものの、自らの品のなさを思い知ったのだ。
「(広島弁は、汚い)」
広島弁が汚いかどうかは人の判断によるであろうが、それがその時の、そしてそれ以降、今に到るエヴァンジェリスト少年の正直な思いであったのだ。
「エヴァンジェリスト君って、大人しいのねえ」
『クッキー』子さんの母親が、声を掛けてきた。品のいい少年だと思ったのだ。少年は、自分に品がないことに落ち込んでいたが、その様子が、『クッキー』子さんの母親には、物静かで品のあるように映っていたのだ。
「いえ、そんなことはありません」
少年は、そう答えた。まだ気付いていなかったが、標準語らしき言葉で返していた。普段なら、
「そうようなことないけえ」
と云っていたはずだ。
「『クッキー』子と仲良くしてやってね」
『クッキー』子さんの母親は、少年を凝視めて、そう云ったが、項垂れた少年は、『クッキー』子さんの母親の言葉もよく聞いておらず、その気持ちも汲み取れていなかった。
「(この子ならいいわ)」
品があるだけではなかった。
「(広島にもこんな子いたのね。いえ、他の土地でもこんな子、なかなかいないわ)」
(続く)
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