2019年9月22日日曜日

ハブテン少年[その38]




『少年』は、『広島カープ』の『衣笠祥雄』選手が、周知の通り、後に偉大な選手になるものの、入団当初はまだまだな選手であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(恥ずかしい…)」

はしゃぐ同級生の輪の中で、エヴァンジェリスト少年は、独り項垂れていた。『クッキー』子さんの誕生日パーティーに招かれたものの、自らの品のなさを思い知ったのだ。

「(広島弁は、汚い)」

広島弁が汚いかどうかは人の判断によるであろうが、それがその時の、そしてそれ以降、今に到るエヴァンジェリスト少年の正直な思いであったのだ。

「エヴァンジェリスト君って、大人しいのねえ」

『クッキー』子さんの母親が、声を掛けてきた。品のいい少年だと思ったのだ。少年は、自分に品がないことに落ち込んでいたが、その様子が、『クッキー』子さんの母親には、物静かで品のあるように映っていたのだ。

「いえ、そんなことはありません」

少年は、そう答えた。まだ気付いていなかったが、標準語らしき言葉で返していた。普段なら、

「そうようなことないけえ」

と云っていたはずだ。

「『クッキー』子と仲良くしてやってね」

『クッキー』子さんの母親は、少年を凝視めて、そう云ったが、項垂れた少年は、『クッキー』子さんの母親の言葉もよく聞いておらず、その気持ちも汲み取れていなかった。



「(この子ならいいわ)」

品があるだけではなかった。

「(広島にもこんな子いたのね。いえ、他の土地でもこんな子、なかなかいないわ)」

(続く)



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