『少年』は、『広島カープ』の『苑田聡彦』選手が、1967年には一軍に定着するようになり、また、後には名スカウトとなるものの、1966年まではほとんど2軍暮らしであったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その43]の続き)
「(痛っ!)」
耳の痛みに、エヴァンジェリスト少年は、我に返った。
「エヴァ、次の項目を読め」
パンヤ先生に、耳を掴まれ、上に持ち上げられたのだ。パンヤ先生は、授業中、生徒の席の間を歩き回り、そして、生徒を当てる時に、その生徒の耳を身を掴むのだ。
「はい」
保健の授業である。教科書を読めと云われたのだ。自分の世界に入ってはいたが、その一方で先生の話は聞いてはいたので、戸惑うことはなかった。
「ん….」
「どうした?」
「いえ、なんでもありません」
教科書は立って読むのだが、起ち上がる時に、股間の状況で多少不都合があったのだ。自分が起つ前に、勃っているモノがあった。
「(『クッキー』子さん……)」
授業を聞きながらも、エヴァンジェリスト少年は、『クッキー』子さんとの『夫婦生活』を妄想していた。
「アータ、できたわよ、『クッキー』。さあ、召し上がれ!」
と云って、微笑みを向けてくる『妻』の顔の下が、『くしゃれ緑』になっていた。
「(んぐっ!)」
パンヤ先生に掴まれた耳の痛みに我に返ったものの、股間の『反応』はまだ完全に我に返り切ってはいなかった。
「どうした、早く起て」
「あ、は、は、はい」
脚が机に引っ掛かって起ち難かった風を装い、なんとか起ち上がって、教科書を読んだ。
「よーし、まあいいだろう。でも、エヴァ、お前、今日なんか変だぞ。大丈夫か?」
パンヤ先生は、エヴァンジェリスト少年の挙動を少し不審には思ったようだが、彼の『異変』には気づかなかった。優等生のエヴァンジェリスト少年が、まさか自分の授業の間に、『そんな』妄想をしているとは想像だにしなかったのだ。
「(ちぇ、いいところだったのに)」
しかし、優等生はもう『目覚めて』いたのだ。
「(でも、良かった。女子が別で)」
そうだ。保健体育の授業は、男女別であった。だから、『クッキー』子さんに、今の自分の少し妙な挙動を見られずに済んだのだ。
しかし、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の1年の男子の保健体育を担当するパンヤ先生は、いい先生ではあったが、怖ろしい先生でもあった。
(続く)
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