『少年』は、1967年、『ミドリチュー』の先輩である『広島カープ』の『山本一義』選手が、前年度3割を打ち、堂々たる主力選手になっていたものの、チーム自体は決して強くはなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その20]の続き)
「(今日は、生活委員会じゃ!)」
その日、朝からエヴァンジェリスト少年の心は弾んでいた。
「(…..一緒じゃ)」
なんだかいつもよりニコニコしている末っ子を見て、母親が訊いた。
「あんたあ、どしたん?」
「うん?」
「なんかえーこと、あったん?」
「ないよね。ほいじゃ、行ってくるけーね」
自宅の玄関を出て、門を出、蓮田の横の道を『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)に向いながら、少年は、一つの笑顔を思い浮かべていた。
「(どこの小学校じゃったんかのお?)」
少しつり目で、少し口が大きいが、むしろそれがどこか美人映画女優を思わせるす少女である。
「(皆実小学校にはおらんかった)」
翠町中学の校区は、皆実小学校か大河小学校だ。そして今は、翠町小学校もそうだ。
しかし、当時はまだ、翠町小学校はできていなかった。というか、エヴァンジェリスト少年が、翠町中学に入学したその年(1967年)、翠町小学校は開校したのだ。
「(でも、家は翠町みたいじゃ)」
だから、大河小学校でもない。
「(なんか、『帰国子女』子ちゃんみたいじゃ…..)」
『帰国子女』子ちゃんは、皆実小学校5年生の時に同じクラスになった少女だ。そして、エヴァンジェリスト少年の本当の意味での初恋の人であった。
「(どっかから引越してきたんじゃろ)」
『帰国子女』子ちゃんは、文字通り『帰国子女』で、皆実小学校に転校してきたのだ。そして、その子も中学からなので、転校とはいえないものの、どこか別の地域から引越してきたと想像できた。そこが、『帰国子女』子ちゃんのイメージと重なった。
「(綺麗じゃし、この辺では見たことない感じじゃし)」
皆実小学校6年生の時に同じクラスになり、浮気にも好きになった『トウキョウ』子さんも綺麗であったが、和風美人だった。
少年が今、その顔を想い浮かべる少女の美しさは和風ではなく、タイプとしては、エキゾチックな美しさを持っていた『帰国子女』子ちゃんに共通していたのだ。
「(ふふふ)」
3人の美人少女を思い浮かべて頬を緩める色男、いや色少年の顔からは、少年らしい初々しさが失せていた。
(続く)
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