『少年』は、『広島カープ』の『水谷実雄』外野手が、後には首位打者や打点王のタイトルを取る強打者になるものの、1966年は1打席しかないまだまだの選手であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その39]の続き)
「え?....うん、有難う!」
遠慮せず手作り『クッキー』を食べるよう声をかけてきてくれた『クッキー』子さんの方に顔を上げ、エヴァンジェリスト少年は、快活に返事した。
「美味しい?」
『クッキー』子さんは、少し上目遣いにエヴァンジェリスト少年に訊いた。
「うん!とても美味しいよ!」
エヴァンジェリスト少年は、気付いていなかったが、言葉が、広島弁ではなくなっていた。
「アタシ、ママに『クッキー』の作り方、教えてもらうの」
『クッキー』子さんのその言葉に、エヴァンジェリスト少年は再び、甘美な妄想の世界に入って行った。
「(そうだ、『クッキー』子さんは、ボクの『妻』として、ボクとボクたちの子どもの為に『クッキー』を作ってくれるんだ!)」
食卓で『クッキー』を待つ自分と自分の子どもの姿が、眼の前に見えていた。が……
「もう少しでできるから、二人ともいい子で待つのよ」
『妻』がそう云って、微笑む。
(続く)
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