『少年』は、当時(1967-1969年頃)、人気となっていたグループ・サウンズの一つである『ブルー・コメッツ』のヒット曲『ブルー・シャトウ』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その138]の続き)
「あんたあ、そうようなこと、云いんさんな」
ハハ・エヴァンジェリストは、困ったような、悲しそうな顔をしていた。
「どうして?」
その年(1969年)、助手として参加した『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の臨海学校で、教師に対して、きっぱりと『嫌です!』と云ったように、エヴァンジェリスト少年は、母親に対しても怯まず、疑問を呈した。
「どうしてもよねえ」
2人の兄と違い従順ないい子であった末息子のそれまでと異なる物言いに戸惑い、母親は理屈にならない返事しか云えなかった。
「変だよ」
当り前のことであった。当り前過ぎることであった。
「あんたあ、いい加減にしんさい!」
母親は、大きな声を上げるしかなかった。
「でも、憲法違反だよ」
北海道の長沼町に「ナイキ地対空ミサイル基地」を建設しようとする自衛隊に対して、地元住民たちが、自衛隊は違憲、として立ち上がったニュースをテレビで見たエヴァンジェリスト少年は、
「自衛隊は違憲に決ってるじゃない」
と云ったのだ。
「何云うとるん!」
「自衛隊って、どう見たって軍隊だよ。日本の憲法は、軍備を持つことを禁止しているのに」
正論を云う息子に、母親は、
「あんたあ、そうようなこと、云いんさんな」
と云うしかなかったが、それでも息子は引かない。息子は、自分の言葉に母親が怒るであろうことは想像できていたが、それでも自分を抑えることができない。
『パルファン』子さんが、脳裏から離れなくなり、堪らず、帰宅する『パルファン』子さんを追い、
「ボクと付き合ってくれないか?!」
と、そう告げたように、自分を抑えることができない。
「憲法違反に決まってる!」
「やめんさい!そうようなことを云うんは!」
と、息子を平手打ちするしかなかった。
「ぐうーっ!」
息子は、打たれた頬を押さえながら、母親を睨みつけた。
(続く)
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