『少年』は、その年(1969年)、アポロ11号で人類初の月面着陸が為されたが、その時の映像を見る限り、月にウサギがいる様子がないだけではなく、臼も杵もないらしいことに、ハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
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(ハブテン少年[その148]の続き)
「これやってくれ」
と云うと、パンヤ先生は、エヴァンジェリスト少年たち3人の男子生徒に何やら印刷された紙の束をテーブルに、どんと置いた。
「は?」
と、3人が紙束に眼を演っていると、その紙束の上に、3本の赤鉛筆が投げられた。
「へ?」
「コーセイしてくれ」
「(コーセイ?いや、ボクたちは、不良ではないから、『更生』する必要なんかないぞ)」
『ハブテル少年』となっていたエヴァンジェリスト少年は、憮然とした様子を隠さない。
「これ、学校から父兄へのお便りなんじゃが、間違いを直してくれ」
『コーセイ』は、『更生』ではなく『校正』であった。3人の男子生徒がパンヤ先生に連れて来られたのは、印刷所であったのだ。
「でも、どうするのか知りません!」
「ええけえ。やり方、教えちゃるけえ」
と、パンヤ先生は、印刷物を1枚テーブルに置き、赤鉛筆を手にして説明を始めた。
「(何故、ボクたちがこんなことをしないといけないんだ!)」
と云う口にはしない不満を感じたのか、
「お前ら、頭がええけえ、頼むんじゃ」
と、パンヤ先生は、強面の顔の割に可愛い眼をくりくりさせ、口角も上げた。
「はい……」
『ハブテル少年』となってはいたが、煽てには乗ってしまう少年であった。
「(そうかあ……ボクは、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の中でも特に、頭がいい、と思われてんるんだ。まあ、2年の時は、担任のオーカクマク先生に、生徒会長になるように云われたしなあ)」
その時、『パルファン』子さんと、あの『肉感的な』少女とを思い出した。
「エヴァさんって、ハンサムなだけではなく、頭もいいのねえ。ス・テ・キ!」
2人の少女のどちらが云った(と妄想した)かは、問題ではなかった。
「(んぐっ!)」
慌てて、股間を抑えた。
(続く)
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