『少年』は、その年(1969年)、アポロ11号で人類初の月面着陸が為されたが、その時の映像を見る限り、月にウサギはおらず、かぐや姫もいそうではないことに、ハブテた。
ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られると思ったが、ハブテた。
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(ハブテン少年[その150]の続き)
「(『運がよけりゃ[With A Little Bit of Luck])』…ええ、運が良かったら、アナタと….)」
暗い座席に身を潜めながら、少女は、ステージの少年に光る眼を送っているように見える。
「(『いつも歩くの、あの通り[On the Street Where You Live]』、そう、アナタのウチの前の通りよ、ドキドキしながら)」
少女の瞼には、ステージで身を傾けながらテナー・サックスを吹く少年の自宅の門の中の垣根の向こうの部屋を伺う自分の姿が浮かんでいるのだろうか。
「(うん!『ステキ[Wouldn't It Be Loverly])』よ!アナタとの部屋があって、チョコ食べて…)」
ステージの少年は、テナ-・サックスのリードを舐め、客席の少女は、チョコがついたかのように自らの唇を舐めているように見える。
「(『ディンドンって、ああ、教会の鐘が鳴る[Get Me to the Church on Time]』のね、アタシたちの結婚式の...)」
教会の前で純白のウエディング・ドレスを身にまとった自分と、タキシードを着て何故かテナ-・サックスを持つ少年の姿を夢想しているのだろう、きっと。
「(ううん、『眠れないわ!ええ、踊り明かしましょう!』[I Could Have Danced All Night)])」
『広島市青少年センター』のホールの客席に座ったまま、微かだが、社交ダンスを踊るように少女の体が動いているようだ。
(続く)
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